日本だけを狙った行動ではなく、軍事・領土・国内政治を組み合わせた多目的な
訪問です。
なぜ今、択捉島を訪問したのか
第一の目的は、北方領土について「ロシア領であり、領土問題はすでに解決済みだ」
という立場を、行動で示すことです。
プーチン氏は前日の12日、北方領土について「第二次世界大戦の結果生じた現実で、
国際的文書によって確定している」と発言しました。その翌日に択捉島へ入ったの
ですから、発言と訪問は一体の政治的メッセージと見るのが自然です。
第二の目的は、日本の対ロシア制裁へのけん制です。
ロシアは、日本がウクライナ侵攻後に制裁へ加わったことを「非友好的政策」と批判し、
2022年に平和条約交渉の中断を表明しました。今回の訪問には、
制裁を続ける限り、領土交渉には応じない。むしろロシアの実効支配を強める
という対日メッセージが込められていると考えられます。
第三の目的は、軍事的な存在感の誇示です。
今回、プーチン氏がサハリン州に入った直接の予定は、太平洋艦隊の大規模演習を視察
することでした。演習には約60隻の艦艇・潜水艦など、航空機や無人機約30機、兵員
1万3000人以上が参加したと報じられています。RIAノーボスチの報道
その流れで択捉島へ訪問したことには、北方領土を単なる離島ではなく、オホーツク
海と太平洋を守る軍事拠点として重視していることを示す意味があります。
日本への対抗姿勢なのか
結論としては、明確な対抗姿勢です。ただし、すぐに日本へ軍事行動を起こすという意
味ではありません。
今回示されたのは、主に次の三つです。
北方領土の返還交渉には応じない
日本の制裁や防衛力強化を警戒している
ロシアによる実効支配を今後も固定化する
特に、歴代のロシア大統領の中でもプーチン氏自身はこれまで訪問を見送ってきました。
そのプーチン氏が初めて択捉島へ足を踏み入れたことは、首相や閣僚の訪問よりはるか
に重い政治的意味を持ちます。
中国や米国へのメッセージでもある
今回の行動は、日本だけでなく米国や中国にも向けられています。
日本に対しては「領土問題は終わった」、米国に対しては「ロシアは極東とオホーツク
海を防衛する」、中国に対しては「ロシアも東アジアで軍事的影響力を維持している」
というメッセージになります。
北方領土周辺は、ロシアの戦略原潜が活動するオホーツク海の出入り口です。ロシアに
とって択捉島や国後島は、領土問題であると同時に、核抑止力を守る重要な軍事拠点な
のです。
今後の日露関係はどうなるか
今回の訪問によって、北方領土交渉の再開はさらに難しくなったと考えられます。
日本政府は強く抗議するとみられますが、抗議だけでロシアが方針を変える可能性は
低いでしょう。一方、ロシア側も日本との関係を完全に断絶したいわけではなく、漁
業やエネルギー、安全保障上の連絡まで切るとは限りません。
つまり今後は、
「領土問題では厳しく対立しながら、必要な分野では限定的に連絡を続ける」
という冷え込んだ関係が長期化する可能性があります。
今回の訪問は単なる視察ではありません。プーチン氏が自ら択捉島に立つことで、
「北方領土を返還する意思はない」というロシアの立場を、これまで以上に強い形
で日本へ突きつけた行動だといえるでしょう。

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